23歳独身チャットレディのセフレとのラブストーリー

彼を見つけることを目的に歌舞伎町に来た。
外に出たら雪が降っていたけれどそんなのどうでも良くてそのまま歩いた。

私はチャットレディをしている。ただのチャットだけの商売なのに、セフレを持ちかけられたりする。
でもセフレになんて興味がない。愛のないセックスほど痛いものはない。
自分で選んだ仕事だけど、生活の一部でセフレとかの対象に見られると心が荒む。
その荒みを癒してくれるのが、彼。

彼が勤めているお店の名前は聞いていたけれど、場所がわからなくて迷ってしまった。
歌舞伎町には星の数ほどのホストクラブがあって、彼の所属している店はその中でも規模が
大きくて雑誌やドラマにもよく出ているお店だからすぐわかると思っていたのに。
歌舞伎町は二丁目に似ていて店が密集しているし、路地も通りもたくさんあってまるで迷宮。
彼は二部営業だから終わるのはお昼すぎ。その時間になると、二部営業終わりのホストたちを
たくさん見つけることができた。彼らは物珍しそうに私をみる。
私の見た目がおそらくこの街のイメージに合わないのだろう。
黒髪でナチュラルメイクの童顔だし、清楚だとよく言われるから。

他のホストを見つけることはできるのに、彼を見つけることはできない。
雪はやまないし、寒くなってきた。

そのとき後ろから大丈夫ですかと声をかけられた。
彼だったら良いのにと思ったのに、敬語だし声も違うからきっと知らない人だ。

振り返ると、そこには二十歳くらいの男の子が傘を私に差し出していた。
茶髪で今時のルックスの綺麗な顔立ちの人だった。
ホストなのかなって一瞬思ったけど、全く暗い雰囲気がないからきっと違う。
ホストには独特の影がある。色気とは影から発生するもの。陽気な人に色気がないのは、そのせい。

私は作り笑いをしてしまう癖がある。この時も目の前の男にそうしていた。
人にはいつも笑顔でいいね、と言われる。誰もこの笑顔を作ったものだって思わない。
唯一それに気づいてくれたのは、彼だけだった。